草原にいる

雑文を書きます。

 脳がじゅくじゅくと膨らんで枕を融かす夜がある。

 暑い夏の夜なんかもそうで、今日みたいなひんやりとした静謐の夜なんかも、なおさらそうだ。目が体の奥から押し出されて、何も見えなくなる。

 こうなったら酒を入れて脳みそを冷まそう、と一杯ごくりと飲んでもむしろ逆効果で、脳から出てあちこちに枝のように広がる集中の針が、変にぼやけてぶわぶわと広がっていってしまう。そうなるといよいよだめになる。元々どうでもいい思考ばかりが駆け巡っていたものの、どうにか鋭敏な感覚を持っていただけましだった自分の意識が、その鋭敏な感覚すらよく見えなくなって、ぐっと集中しても何も定まるものがなくなる。いつまでたっても周波数の合わないラジオのように、晴れないノイズの中に微かに誰かの声が聞こえるのみである。