草原にいる

雑文を書きます。

2019-10-01から1ヶ月間の記事一覧

夜明けの景色

湿った草の感触が足に爽やかである。 霧が深い。 湿った空気を触る。湿った空気を吸い込む。草も、土も、石も水を吸って妙に重いのである。重みを持った空気。それでいてひんやりと晴れやかである。 服にしみ込んだ心地よい水の感覚にいつまでも包まれていた…

雨の日だと仮定して書く

時折、においのする文章に出会うことがある。 安部公房からは古いオフィスビルのにおい。黴に侵された空調、昭和に取り残されたタイル床、黄ばんだ壁、過去の栄光にすがり続ける加齢臭。深夜の都会の下水と煙草。 谷崎潤一郎からは華やかに彩られた香水のに…