草原にいる

雑文を書きます。

知らない間に亡びていく

 一度だけタイミーで都心の方のピザのデリバリーのバイトをしたことがある。庶民が立ち入れないオーラを放つ高級マンションに配達に行って、正面玄関から入ったらフロントの人に怒られてしまった。業者用と住人用で出入り口が違う住居が存在することを初めて知ったが、玄関で受け取りに来た人が今思えば長友選手に似ていた気がする。あれは長友選手だったのかもしれない。

 

 最近モテ期が来ている。誰にモテているかといえば毎週木曜日に職場を掃除しに来るお婆さんにである。会うたびにかっこいいねえと言われ続け、ボールペンをくれる。ボールペンに印字された会社名を調べたら既に倒産していた。最近買ったらしいスマートウォッチの設定方法を教えてあげたら、カップラーメンや靴下をもらった。その次の週もなぜかもらった。休日に、もらったカップラーメンを食べたら化粧品と加齢臭と線香の混じった匂いがスープに染み付いていてとても食べられたものじゃなかった。捨ててしまったらなんだか泣いてしまいそうな気がしたので無理して食べた。無理して食べて、抹香臭いゲップをしながら泣いた。

 

 祖父の十七回忌の折に、祖母に3年ぶりに会う。足腰が悪く本堂に入る10段程度の階段も登れなくなっていたので、自分が背負って登ってやる。親世代の親戚は全員普通の幕の内弁当なのに、子供ら(といっても全員成人)は焼肉弁当が出た。時はいつまでも止まっているが、否応なく過ぎていく。