草原にいる

雑文を書きます。

井の頭公園の記憶

 井の頭公園を歩いていたら、白髪の人間がしゃがんでうつむいていた。男か女かは暗かったのでよくわからない。甚平のような褐色の古ぼけた服を着ていた気がする。年齢もよくわからなった。髪の毛を見れば一見年寄りのように見えたが、腕や足はすべすべとして若々しい印象を受ける。

 体調が悪いのかと思い、一瞬声を掛けようとしたが、何やら小声で話しているのが聞こえた。相槌を打ったり、ふふふと笑ったりしている。電話で話している?妙に甲高い声だった。

 すぐ横を自転車が通って行って、なんだか恥ずかしかったり気味悪かったり変な気持ちになったので、その自転車が巻き起こした風に乗るように足早にそこを去った。

 今思い出しても不可解である。今日の出来事だったのか、昨日の出来事だったのか、それとももっと昔の記憶なのか、今現在ではそれすらもよく分からなくなってしまった。夢を見ていたのかもしれない。

 

 それから井の頭公園について、こんな記憶もある。これは紛れもなく今日の話だ。井の頭池にかかった橋を渡っていたら、橋の真ん中で急に叫び始めた男性がいた。

「夢は絶対に叶う!どんな夢でもぜーったいに叶う!俺は絶対に夢を叶える!俺はぜーったいモッコ(?)になってやる!」

 そう叫び終えるとすぐに自分の方に向かって橋を渡っていってしまった。井の頭公園は面白い場所だ。