草原にいる

雑文を書きます。

『壺の中にはなにもない』

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 『壺の中にはなにもない』(戌井昭人著、NHK出版)を読みました。

 働く意欲も趣味も恋愛経験もなく、のほほんと暮らしている青年の成長譚です。

 そのあまりにマイペースな性格から、家族や職場の人から疎まれている主人公ですが、陶芸家の祖父は彼に理解を示して、自分と同じ道を歩ませようと画策します。そんな祖父に嫌々ながら巻き込まれ、色々な人々との交流を通じて、主人公がお見合いしたり、壺を割ったり、原始人と会ったりするお話です。

 

 駆け抜けるような軽快に進む筆致が心地よく、あっという間に読み終えて、ほんのりと温かい読後感。主人公と愛すべき登場人物たちのやり取りを読んでいると、意味があろうとなかろうとさして重要ではないし、頑張ってもいいし頑張らなくてもいいのだな。所詮壺の中にはなにもないんだからと、心が軽くなりました。

 

 興味があれば、ぜひ。